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不動産お役立ち情報


  大手不動産会社には気負付けて。2015年4月13日
        
『週刊ダイヤモンド』特別レポート大手不動産が不正行為か


マンションの一室を賃借した借主が、隣地の犬の鳴き声による騒音のため生活環境に重大な瑕疵があるなどと主張して、仲介業者に対しては支払い済み手数料の返還を、貸主に対しては賃料減額を求めた事案で、本件犬の鳴き声は社会生活上受忍すべき限度を超えたとは言えず、瑕疵があるとも言えないとして、賃借人の請求を棄却した事例
1事案の概要
 賃借人Xは、平成21年1月20日、宅建業者Y1の仲介で、賃貸人Y2から、本件居室を賃料1ヵ月8万4,000円、期間2年間として賃借した。
 本件居室が存するマンションの隣地で、Aが長年にわたり小型犬パピヨン種の繁殖を行っており、Xは21年8月中旬頃から、新宿区役所の担当部署に対し、本件犬の鳴き声が大きいと通報するようになった。Xは、Y2にも本件犬の鳴き声の苦情を申し入れていたところ、Aは、自宅1階の犬のいる部屋の窓を二重窓とする等の防音工事をした。
 その後、Xは、以下の主張を行った。
・Y2は、Xが居住するに適した環境を確保すべき義務がある。民法606条は、物理的な瑕疵に対する修繕のみならず周囲の騒音に対して適切な措置を講ずることも義務づけており、Y2がこれを怠ったときは債務不履行に基づく損害賠償請求として、賃料の相当額の減額を請求出来る。
・Y1は、隣地でAが犬の繁殖をしていることは、Y2やマンション管理会社担当者から聞き出すことができたはずで、「隣人が犬の繁殖をしていて複数の犬の吠える声が聞こえることがある」という程度は、Y1において容易に調査が可能であったから、Y1のXに対する仲介業務には債務不履行がある。 これに対し、Y1、Y2は、Xの主張に応じなかったため、Xは裁判所に訴えた。


2 判決の要旨
 裁判所は次のとおり、Xの訴えを棄却した。
(1)事実認定
 本件犬の鳴き声による騒音は、犬が一斉に鳴いたときは、本件境界線上で都民の健康と安全を確保する環境に関する条例136条が定める午前8時から午後8時までの規制基準であるL5値(注:時間率騒音レベル)の60デシベルを超えるものであったと認められるものの、他方、一斉に鳴く時間は限られている上、本件境界線上と本件居室内とでは騒音の大きさは相当に異なると推認され、本件居室が存する場所の地域性(商業地域で他の生活騒音も大きい地域)、Aは長年にわたり犬の繁殖を行っていたものの、Xが本件居室に入居するまで騒音が問題とされることはほとんどなかったこと、AはY2を介したXからの苦情を受けて防音工事を行うなどの対処をし、騒音の測定値も相当に改善したこと等の諸事情に照らせば、本件騒音の発生は防音工事前の分も含めて、全体として受忍限度を超えるものとは認められず、Xの平穏な生活を営む権利を侵害したと認めることはできない。

(2)Y2に対する請求について
 Xは、「Y2の修繕義務の債務不履行または瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として、民法611条1項の類推適用により、賃料の減額を求める」旨を主張するが、Y2に債務不履行が存したとも、本件居室に瑕疵が存したとも認めることはできないから、上記主張は前提を欠き、採用することができない。また、上記のとおり本件居室が通常保有すべき性質を欠いているとか、社会通念上賃借人の使用収益に支障が生じているとか言うことはできず、したがって、民法570条に言う瑕疵があるとは認められないし、Y2に債務不履行が存するとも認められない。

(3)Y1に対する主張について
 Y1は、犬の鳴き声が本件境界線上において条例の規制基準を超えることがあるなどとは認識していなかったものと推認され、それを認識すべきであったとも言えないから、Y1に調査・説明義務が存したとは到底言えない。

3 まとめ
 騒音は、人により感じ方も異なることもあって、物件の瑕疵や仲介業者の調査説明義務にあたるか否かの明確な判断基準はない。しかし、本件のような商業地では、ある程度の騒音は受忍限度にあると言えよう。まして、今回は、隣人が相当程度騒音軽減に努力しており、賃貸人、仲介業者への請求は妥当性を欠くものと言える。
 なお、XはAに慰謝料300万円と弁護士費用20万円等の支払を求めて提訴したが棄却された。

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賃借人が貸室の浴槽内でリストカットにより自殺をしたことにより損害を被ったとして、賃貸人が、賃借人の相続人に対して損害賠償を求めた事案において、ユニットバス交換費用および賃料減額分の損害について賠償責任が認められ、賃貸人の請求の一部が認容された事例(東京地裁判決 平22年12月6日)
1 事案の概要
 賃貸人Xは、平成13年6月、Aに対し、所有していたアパートの2階部分の201号室(専有面積23.55u)を期間2年、賃料月額8万5,000円、敷金17万円、共益費2,000円等の約定で貸し渡した。その後、本件賃貸借契約は、平成15年6月および平成17年6月に更新され、Aは、本件貸室を継続的に使用していた。

 なお、Aの父であるBは、平成13年6月、本件賃貸借契約上の債務について連帯保証したが、平成16年6月に死亡した。
 Aは、平成18年10月28日ころ、本件貸室の浴室において、いわゆるリストカット等の手段により自殺した。自殺後、Aの相続人である母C、兄Dは、相続放棄の申述をしたことから、姉であるYが単独相続した。Xは、新たな賃借人の募集はしなかった。
 Xは、賃借人Aの自殺により損害を被ったとして、Aの相続人であるYに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求権に基づき、クリーニング費用および内装造作取替費用として150万円、本件貸室は社会通念上使用し得ない状態になったことを理由とする賃料等相当額の逸失利益として330万円の合計480万円の損害があるとし、その一部である250万円の損害賠償を求めて提訴した。

2 判決の要旨
 裁判所は、以下のように判示し、Xの請求を一部(142万円余)認容した。

(1)Aは、本件賃貸借契約に基づき、Xに対し、原状回復義務を負っていたところ、これに付随する義務として、自然減耗以外の要因により目的物件(本件貸室)の価値が減損することのないように本件貸室を返還すべき義務を負っていたものと解される。そして、社会通念上、自殺があった建物についてはこれを嫌悪するのが通常であり、その客観的価値が低下することは当裁判所に顕著な事実である。そうすると、Aには本件賃貸借契約に基づく原状回復義務に付随する義務の債務不履行があったといわざるを得ない。
(2)見積書の内容をみるに、本件自殺が行われた浴室以外の部屋に係る補償費用やエアコンの交換に係る費用が含まれており、それらは本件自殺とは無関係のものであり、また、クロスの貼替費用などは通常損耗によるものと考えられるから、損害と認めることはできない。そうすると本件自殺と関係が認められるのは、本件自殺が行われたユニットバスの交換費用のみである。YはAの兄によって洗浄したから損害はないと主張するが、いかに洗浄しようともそれに対する強い社会的嫌悪感をぬぐうことは困難であると認められる。そして、証拠によれば、その額は55万6,500円および消費税2万7,825円と認められ、これに反する証拠はない。そして、この費用はいわば本件貸室の修繕費用であるから、これをさらに経年減価するのは相当ではない。
 したがって、58万4,325円をもって、内装造作取替費用に係る損害とみるのが相当である。
(3)本件アパートの貸室にはなお新規の賃借人が現れる状況にあるものの、Aとの本件貸室の賃料月額8万5,000円は本件自殺当時には客観的相場よりも割高となっていたと認められ、5万6,000円が本件貸室の客観的賃料相当額として相当であると考えられる。自殺による賃料の低下の幅は時の経過により縮減していくものと考えられる。そして、本件全証拠をもってしても、本件貸室の賃料額が本件自殺によってどの程度低下したかを判断することは困難であるから、民事訴訟法248条により、最初の2年間については1ヵ月あたり2万5,000円、次の2年間については1ヵ月あたり1万円の低下が生じたと認めるのが相当である。
 そうすると、本件貸室明渡しの翌日(平成18年11月7日)から本件口頭弁論終結時(平成22年11月1日)までの賃料減額分の損害としては、48ヵ月分84万円をもって相当と認める。

3 まとめ
 本件では、原告の賃貸人は、クリーニング費用および内装造作取替費用として150万円、賃料全額の空室月分(提訴日現在で38か月分)の逸失利益330万円の合計480万円の一部である250万円の損害賠償請求をしていたが、上記のように、浴室以外の部屋に係る補償費用やエアコンの交換に係る費用は本件自殺とは無関係のものとして認められず、また、賃料の逸失利益分についても、客観的賃料相当額を認定した上で、その一部に限り認められている。賃貸住宅における自殺をめぐる損害賠償請求の事例の一つとして参考にしていただきたい事例である。

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領収証をもらえない経費についての税務の取扱いは、以下のとおりとなっています。
■領収証がもらえない飲食代
(1)どのように対応したらよいか?
 仕事関係の人たちで飲みに行って、領収証をもらえないことはよくあります。たとえば、5人の飲食代が5万円かかり、割り勘で1万円ずつ支払って、領収証をまとめて1枚もらう、といったケースです。
 「領収証なしだから経費に落ちないか…」と考える人が多いのですが、これは帳簿に、@年月日、A支払先(店の名前)、B支払った金額、C内容(飲食代)、D参加者、の記載があれば問題なく経費になります。
 店の名前を忘れないように、名刺やチラシをもらっておくこともお勧めです。名刺を領収証代わりに使うことができます。
 だからと言って、飲食代のほとんどが領収証なしでは不自然です。やむを得ないケースに限られますのでお気を付けください。
 また、領収証の代わりにレシートを受領することも、まったく問題ありません。税務調査では、偽造の恐れがない点で、「上様」領収証よりむしろレシートを勧められます。


(2)消費税の取扱い
 上記は法人税での取扱いですが、消費税での取扱いは、法人税よりも厳格に定められています。支払った経費(たとえば10,800円)のうち消費税分(800円)を、消費税の税金計算で差し引くためには、帳簿に取引の明細を記載して、領収証(レシート)や請求書を保存することが要件となっています。
 ただし、領収証がなくても、@税込み3万円未満の場合、A税込み3万円以上でもやむを得ない場合なら、支払った消費税を差し引くことはかまいません。
 よって、一般的な飲食代なら、領収証なしで消費税分を差し引いても問題ないことになります。


■その他領収証がもらえない経費
(1)電車、バス代
 精算書を月ごとに作成して、それに記載しておけば経費となります。パスモやスイカのようにお金をチャージして使う場合は、定期的に履歴を出力して保存しておくことも一つの方法です。


(2)冠婚葬祭の費用
 取引先の結婚式のお祝い金や、通夜・告別式の香典も経費に落とすことはかまいません。出席したときにもらう礼状は保存しておくのがよいでしょう。これを社内ルールとしておくと、社内の不正防止にもつながります。

(3)お車代
 接待したときに渡す「お車代」も、相手の名前を帳簿に記載すれば、交際費として経費に落とせます。お車代の注意点は、もらった側で給料以外の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になることです。
 税務調査が入ると、多額のお車代については、「相手の方は申告されていますか?」と質問されて、相手に聞けずに、結局こちらが修正せざるを得ないことがあります。
 あらかじめ「タクシー券」を購入しておき、それをお客様に渡すほうが税務署への説明は付きやすくなります。

(4)相手先や使途が明示できない経費 支払いの相手先や使途が明示できないいわゆる「裏金」は、会社の経費に落とせないのはもちろん、「使途秘匿金(しとひとくき
ん)」として、支出額の40%が追加課税になります。
 このようなものは、会社で少しずつお金をためて、なんらかの支出に充てるというケースが見受けられます。出張したときの「日当」をためている会社もあるようです。日当は支払った会社で「旅費交通費」として経費に落ちます。一方、もらった個人も、所得税、住民税、さらに社会保険の対象にもなりません。だから、日当をためようとする会社があるのですが、日当は規定を定めて、出張した役員・社員に支払うことになります。

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AはBとの間で土地の賃貸借契約を締結し、その地上建物を所有し、占有している。しかし、同土地についての賃貸借および地上建物の登記のいずれも具備していなかったところ、同土地について抵当権が設定され、その抵当権設定登記がなされた。その後、競売により同土地を取得したCは、Aに対し、建物収去土地明け渡しを請求した。なお、Aは抵当権設定登記の後も、引き続き、長期間にわたり、Bに対して地代を継続して支払い、同土地を占有してきた。 
 Aは、Cに対し、抵当権設定登記後、賃借権の時効取得に必要な期間同土地を占有してきたので賃借権を時効取得したとして、同賃借権をもって対抗することはできないか。
1 はじめに
 賃借権が抵当権に対抗できない場合、抵当権が実行され、目的物件が第三者(買受人)に移転すると、賃借人は、目的物件を買受人へ明け渡さなければなりません。そのため、抵当権に賃借権が対抗できるか否かは、賃借人にとって重大な問題となります。
 そこで、まずは以下に抵当権と賃借権との関係について記載します。


2 抵当権と賃借権との関係
 抵当権の目的物件について賃借権を有する者は、当該抵当権の設定登記に先立って対抗要件を具備しなければ、抵当権を消滅させる競売等により、目的物件を買い受けた者に対し、賃借権を対抗することができないというのが原則です。
 賃借権の対抗力については、賃借権の登記をしたとき(民法605条)、建物所有目的の借地につき、土地上に借地権者が登記されている建物を所有するとき(借地借家法10条1項)、借家につき、建物の引き渡しがあったとき(借地借家法31条1項)に取得するとされています。
 なお、例外的に抵当権登記の後に対抗要件を備えた賃借権であっても、抵当権に対抗しうる場合として、抵当権者の同意の登記がある場合(同法387条)や短期賃貸借制度の改正前(平成16年4月1日以前)の短期賃貸借があります。

(1)抵当権者の同意の登記がある場合
 民法387条には「1項:登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。2項:抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない」と規定されています。
 同意の登記が必要とされており、借地借家法の定める対抗要件を備えただけでは、本条の適用がないことに注意が必要です。本条の要件を充たした場合には、設定登記前に登記された抵当権者にも対抗することができます。競売によって売却された場合にも、その賃貸借が差押債権者または仮差押債権者に対抗することができない場合を除いて(民事執行法59条2項)、従前の内容で買受人が賃貸人となります。

(2)短期賃貸借
 短期賃貸借については、平成15年法律第134号改正により廃止されています。ただし、平成15年法律第134号改正の施行(平成16年4月1日)の際に、現に在する短期賃貸借については、その後に更新されたものを含めて従前の例によるとされています。


3 本事例について
 本件事例では、抵当権の設定登記よりも前に、賃借権の登記等の対抗力を賃借人は取得していませんので、原則に従えば、抵当権に対抗することはできません。では、抵当権設定登記後、賃借権を時効取得したとして、同賃借権をもって対抗することはできるのでしょうか。この点、本事例と類似の事案について、平成23年1月21日に最高裁の判決が出ており、「対抗することはできない」との結論を出しています。
 判例の事案は、賃借人が途中で死亡し、以降、妻が賃借権を相続により承継取得し、長期間にわたり地代を支払い、土地を占有してきたところ、大蔵省が抵当権を設定し、公売が実行されたという事案でしたが、裁判所は「不動産につき賃借権を有する者がその対抗要件を具備しない間に、当該不動産に抵当権が設定されてその旨の登記がされた場合、上記の者は、上記登記後、賃借権の時効取得に必要とされる期間、当該不動産を継続的に用益したとしても、競売又は公売により当該不動産を買い受けた者に対し、賃借権を時効により取得したと主張して、これを対抗することはできないことは明らかである」と判示しました。
 以上から、抵当権設定登記前に締結された賃貸借契約であっても抵当権に対抗できない場合があること、賃借人としては、対抗力を取得しない限り、原則として賃借権を抵当権に対抗できないため、対抗力を取得しておく必要があること等に注意が必要です。
 なお、賃借権の時効取得についてですが判例では、土地の賃借権について、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権の時効取得が可能とされています。4 法定地上権について
 賃借権が対抗できるか否かという問題とは異なりますが、抵当権の実行の際に、地上権を主張できる場合として、法定地上権という制度がありますので、ここで紹介します。法定地上権については、民法388条に規定されており、同条(前段)には、「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす」と規定されています。
 土地と建物が同一の所有者に属する場合で、i)土地だけに抵当権が設定され、同抵当権が実行されて、第三者が買い受けた場合、第三者が取得する土地は地上権を負担する、また、ii)建物だけに抵当権が設定され、同抵当権が実行されて第三者が買い受けた場合、第三者が取得する建物には地上権が付随する、とされているのです。
 これは、土地と建物が同一の所有者に属する場合、他物権は独立の存在を認められない建前であるため(同法179条)、地上権が設定されたものとみなすことによって、地上建物の存続を図ろうとすることなどから定められたものです。
 法定地上権が成立するための要件として、@抵当権の設定当時に、土地上に建物があること、A土地と建物が同一の所有者に属すること、B土地、建物の一方に抵当権が設定されたこと、C土地、建物の所有者が競売により異なるに至ったこと、が必要とされています。
 なお、Bの抵当権の設定については、土地、建物の双方に抵当権が設定されて、どちらか一方だけが実行された場合、また双方が実行されて別々に買い受けがあった場合も含むとされています。
 以上の要件を満たした場合、法定地上権は法律上当然に発生することになります。法定地上権の具体的な内容については、当事者が協議をして決めることができますが、地代について協議が調わない場合には、当事者の請求により裁判所が定めると規定されています(同388条後段)。
 また、存続期間について当事者間で協議が調わない場合には、存続期間の定めがないものとして、借地借家法の規定に従うことになります。

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◆平成24年度税制改正大綱は、昨年12月に発表されました。今後予定される消費税の増税を考慮してか、大きな改正はありませんでした。個人に関係がある改正点を、順に説明します。
■住宅取得資金の贈与【減税】
 直系尊属(祖父母、両親)から、住宅を取得するための資金の贈与を受けた場合、一定の金額までは贈与税が非課税となります。非課税の枠は平成24年が一番多く、来年以降は少なくなっていきます。平成24年1,000万円、省エネルギー性・耐震性を備えた住宅1,500万円平成25年700万円、省エネルギー性・耐震性を備えた住宅1,200万円平成26年500万円、省エネルギー性・耐震性を備えた住宅1,000万円。
 翌年3月15日までに住宅を取得し、12月31日までに居住が見込まれることなどが条件となっています。年110万円の非課税枠と合わせて適用でき、贈与税がゼロでも申告の必要があります。


■特定支出控除の拡大【減税】
 サラリーマンの必要経費を一部認める減税制度について、判定基準が下がり、さらに適用対象が広がります。平成25年からは、「給与所得控除額×1/2」(現状は「給与所得控除額」)を超える部分が控除対象となります。
 また、適用対象については、以下が追加となります。
@職務の遂行に必要な弁護士、公認会計士、税理士、弁理士など
の資格取得費
A職務関係の図書費、衣服費、交際費(年間65万円が上限) 実際に計算してみると、残念ながらそれほど大きな減税にならないことがわかります。


■国外財産調書の提出【増減税なし】
 その年の12月31日において、5,000万円超の国外財産がある個人は、翌年3月15日までに「国外財産調書」を提出する必要が生じます。平成25年分から適用されます。


 現状でも、所得が2,000万円超の個人には、「財産及び債務の明細書」の提出義務がありますが、罰則規定はありません。「国外財産調書」は、不提出、虚偽記載に対して、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになりますので、注意が必要です。

■退職所得課税の見直し【増税】
 退職所得については、退職所得控除額を差し引いた残額の1/2のみが分離課税となります。これが平成25年からは、勤続5年以下の役員に対する退職金については、1/2課税が廃止されます。


■譲渡所得の各種特例の延長【減税】
@マイホームの買換え特例
 売却価額の上限を1億5,000万円として、平成25年12月末まで2年間延長されます。
Aマイホームの譲渡損失の2つの特例
 マイホームの買換えが必要な特例と、売却資産に借入金の残額があることが必要な特例のいずれもが、平成25年12月末まで2年間延長されます。
B事業用資産の買換え特例(80%の課税繰延べ)
 所有期間が10年超の事業用資産の買換えについて、取得する土地の面積を300u以上として平成26年12月末まで3年間延長されます。

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戸建住宅、マンションや、商業施設、病院、高齢者介護施設、コンビニなどの敷地提供のために、定期借地契約が利用されるケースが増えていますが、その活用は大手や一部の宅建業者によるものにとどまっている印象であり、不十分な知識で定期借地に関与したためにトラブルとなっている事例も散見します。本稿では、定期借地契約について、基本的な知識をQ&A形式で再確認していただきたいと思います。
T 総論

Q 従前からの普通借地を、定期借地に切り替えることはできますか?


A 定期借地契約は、平成4年8月1日施行の新借地借家法施行後に新規に「設定」する場合にのみ締結できるものとされていますので、旧借地法時代に締結された借地契約はもちろん、新借地借家法施行後でもいったん普通借地として締結された借地契約は、単純に定期借地契約に切り替える(変更の合意をする)ことはできません。
 従前の普通借地契約をいったん合意解約して、新たに定期借地契約を締結する方法が理論上は考えられますが、普通借地権を失わせることに何らの金銭的補償もしなかった場合などには、借地人に不利な合意をしたとして無効とされる可能性があると言われています。


Q 定期借地の契約時に授受される一時金にはどのようなものがありますか?

A 権利金、保証金、前払地代などがあります。
 権利金は、法律上は明文の根拠がありませんが、契約終了時に原則として借地人への返還を予定していない金銭であり、@賃料の前払、A賃借権設定の対価、B場所的利益の対価などに分析されます。定期借地で権利金が授受される場合には、更地価格の1〜2割(場合によっては3割)程度のケースが多いようです。借地人への返還が予定されていない以上、地主に所得として課税されるのが原則です。
 保証金は、借地人から地主に預託される金銭で、@敷金、A金銭消費貸借、B違約金などに分析されますが、通常は、不払地代や原状回復義務等の借主の債務の担保として授受されるものを言います。一概には言えませんが、更地価格の1〜3割程度とするケースが多いようです。将来借主に返還することが予定されているため、地主にとっては、所得税課税のない一時金を取得できるメリットが大きいと考えられています。
 ただ、保証金は将来返還する負担が地主に生じ、その捻出に問題が生じることがあります。借地人としても、資金を長期間寝かさざるを得ないのはデメリットです。そこで、契約期間中の地代の全部または一部を前払いする「前払地代」として、金銭が授受されるケースも出てきました。税務上、この前払地代を、地主は毎年分散して収益として計上し、借主は毎年分散して費用として計上することができることとなったため、特に事業用の定期借地では有効な方法と考えられています。
 いずれの方式を採用すべきか、どのような契約条項とすべきかは、各ケースにおいて慎重に検討する必要がありますので、各専門家へ相談してください。


Q 地主として、定期借地権の登記に応じなければなりませんか?

A 借地権が賃借権であれば、地主は、借地権の登記に応じる義務はなく、これを拒否しても構いません。ただ、定期借地契約の場合、契約終了時期などの法律関係が登記上明確になれば将来のトラブルを回避できるメリットがあるため、地主が登記に応じているケースも少なくないようです。

Q 定期借地契約期間中に、建物が焼失したり倒壊した場合に、借地契約も終了しますか?

A 借地上の建物が滅失しても、借地契約が終了するわけではありません。また、定期借地契約の場合、借地人が建物を再築しても存続期間が延長されることはありません。そのため、残存期間とコストに照らして借地人が建物の再築をあきらめたとしても、地代の支払義務は続くのが原則です。
 このように、建物が滅失した場合や、借地人が転勤や事業縮小といった理由で借地を必要としなくなった場合に備えて、借地人からの中途解約条項を入れておくこともあります。しかし、地主側とすれば、中途解約を認めると予定していた収入を得られず、保証金の返還時期も早まるといったデメリットを生じるので、むしろ借地人からの中途解約は認められない旨の条項を入れておくこともあります。


Q 定期借地上の建物に、借地人が普通借家契約で借家人を入居させてしまっていた場合、地主は、期間満了時に、借家人にも明渡しをもとめることができますか?

A 借地借家法35条は、借家人保護のため、借家人が借地契約の期間満了をその1年前までに知らなかった場合には、それを知った日から1年以内の明渡しの猶予を裁判所に求めることができるとしています。そこで、地主としては、期間満了の1年前に借家人に対して借地期間満了を通知しておく必要がありますし、事前に借地人に建物賃貸の際には「定期借家契約」や「取壊予定建物賃貸借契約」によらなければならないことを義務付けておくことも考えられます。

U 一般定期借地権

Q 一般定期借地権は、どのように設定するのですか?

A 一般定期借地権の設定には、(1)契約期間を「50年」以上の具体的な期間で合意すること、(2)a更新がないこと、b建物の再築による存続期間の延長がないこと、c建物買取請求権を行使しないこと、の3つの特約を定めること、(3)公正証書などの「書面」により契約すること、という要件を満たす必要があります。 一般定期借地権は、50年以上であれば、上限はありませんから、100年、200年と設定しても構いません。ただし、「定期」と言えるためには、契約の終了時期が明確である必要がありますから、「平成24年1月1日から50年以上」といった終了時期が曖昧な契約は認められません。
 また、一般定期借地権は、公正証書による必要はありませんが、必ず「書面」をもって設定しなければなりません。したがって、土地の引渡しを先行し、契約書作成を後日として、契約書上は契約開始日を引渡し日まで遡らせたとしても、法律上は契約書作成日が開始日となり、そこから契約終了日までが50年に満たなければ、定期借地とは認められない可能性も生じますので、注意が必要です。


V 事業用定期借地権

Q 事業用定期借地権は、どのように設定するのですか?

A 事業用定期借地権の設定には、(1)専ら事業の用に供する建物で、かつ、居住の用に供しない建物を所有する目的であること、(2)@契約期間を「10年以上30年未満」とするか、A契約期間を「30年以上50年未満」とし、かつ、a更新がないこと、b建物の再築による存続期間の延長がないこと、c建物買取請求権を行使しないこと、の3つの特約を定めること、(3)契約を「公正証書」により行うこと、という要件を満たす必要があります。 従前は、事業用の借地権の設定は、契約期間が10年以上20年以下と制限されていましたが、平成20年1月1日以降は10年以上50年未満に変更されました。50年以上については一般定期借地の利用が可能であるため、事業用に定期借地権を設定するにあたっては、実質的には上限が撤廃されたことになります。

Q 賃貸マンションや賃貸アパートについても事業用定期借地権の設定は可能ですか?

A 事業用定期借地上の建物は、単に事業目的の建物であればよいというものではなく、「専ら事業の用に供する建物」で、かつ、「居住の用に供しない建物」でなければなりません。したがって、賃貸マンション・アパートが入居者の「居住」の用に供される以上は、事業用定期借地権の設定はできません。高齢者介護施設の場合、デイサービス・ショートステイ用の施設は居住用とまでは言えないので認められますが、グループホーム・永住型老人ホームは入居者の居住の用に供されるので認められません。店舗であっても、住宅併用であれば認められません。これらの事業用定期借地権の設定ができない建物については、50年以上の一般定期借地権の設定を検討することになります。

Q 事業用定期借地契約を、「公正証書」によらずに締結した場合はどうなりますか?

A 事業用定期借地契約は、必ず「公正証書」によらなければならないとされていますので、他の書面で契約書を作成した場合、普通借地契約が締結されたものとみなされる可能性が高く、特に注意が必要です。

Q 事業用定期借地契約の期間満了前に、契約期間を延長する合意をすることは可能ですか?

A 原則可能とは思われますが、平成20年より前に設定された事業用定期借地権については、「10年以上20年以下」という期間制限があった以上、通算してこれを超える延長合意は避けるべきであると言われています。

 定期借地権には「建物譲渡特約付借地権」という類型もあります。

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賃借人が居室を無断で第三者に転貸・占有させたところ、当該第三者が居室内で自殺。居室の原状回復に費用を要し新規賃借人の賃料を減額せざるを得なかったとして、賃貸人が賃借人に損害賠償を請求し、連帯保証人に保証債務の履行を求めた事案で、請求が一部認容された事例 (東京地裁 平22年9月2日判決 一部認容)
1 事案の概要
 賃貸人X(以下、X)と賃借人Y1(以下、Y1)は、Y2を連帯保証人として、平成20年3月31日、以下の賃貸借契約(以下、本件賃貸借)を締結した。
●契約期間:平成20年3月31日から2年間
●賃料:12万6,000円/1月当たり
●禁止事項:本件物件の一部又は全部を第三者に 転貸又は占有させること。
 20年4月ころ、Y1はXの承諾を得ず、本件物件をBに転貸または占有させた。Bは21年6月24日ころ、本件物件の浴室で自殺し7月1日、Bの友人によって発見された。XとY1は、21年8月4日、本件賃貸借を解除し、Xは21年9月17日、本件物件の管理受託業者の従業員に対し、次の内容で本件物件を賃貸した(以下、本件新規賃貸借)。
●契約期間:平成21年10月1日から平成26年7月31日まで(58ヵ月)
●賃料:5万円/1月当たり


 上記事情を踏まえて、XはY1に対し、未納賃料、原状回復費用を含めて総額524万2,735円の損害賠償を、Y2に対しては保証債務の履行を請求した。

2 判決の要旨
 裁判所は次のようにXの請求を一部認容した。

(1)Y1による債務不履行の有無
 賃借人または賃借人が転貸等により居住させた第三者が目的物である建物内で自殺をすれば、通常人であれば当該物件の利用につき心理的な嫌悪感ないし嫌忌感を生じること、かかる事情が知られれば、当該物件につき賃借人となる者が一定期間現れず、また、そのような者が現れたとしても、本来設定し得たであろう賃料額より相当低額でなければ賃貸できないことは、経験則上明らかといってよい。
 賃借人は、賃貸借契約上、目的物の引渡しを受けてからこれを返還するまでの間、善良な管理者の注意をもって使用収益すべき義務を負うところ、少なくとも無断転貸等を伴う建物賃貸借においては、目的物を物理的に損傷等することのないようにすべきことにとどまらず、居住者が当該物件内部において自殺しないように配慮することも含まれるものと見るのが相当である。従って、Y1はXに対し債務不履行に基づく損害賠償債務を負う。


(2)損害発生との因果関係の有無と損害額
 本件物件内でBが自殺したことにより特に必要となったものを含め、経年劣化による分を超過する原状回復費用が認められ、合計94万4,475円が相当因果関係のある損害ということができる。
 本件物件を賃貸するには、宅建業者は賃借希望者に対しBの自殺という事情を告知すべき義務を負うと見られる。告知の結果、本件物件を賃貸できない賃料相当額、賃貸し得たとしても本来設定し得た賃料額と実際に設定された賃料額との差額相当額も逸失利益として、Y1の上記債務不履行と相当因果関係のある損害ということができる。
 ただし、自殺に対し通常人が抱く心理的嫌悪感や嫌忌感は時間の経過とともに自ずと減少し、やがて消滅するのは明らかである。また、本件物件はワンルームマンションで都心に近く、流動性が比較的高いものと見られるから、心理的嫌悪感等の減少は他の物件より速く進行すると考えるのが合理的である。
 Xの逸失利益については、相当賃料額を本件賃貸借と同額の12万6,000円とし、賃貸不能期間を1年、また通常であれば設定されるであろう賃貸借期間の2年を低額な賃料(上記賃料の半額)でなければ賃貸し得ない期間とするのが相当である。以上によれば、逸失利益は277万8,752円となる(1年目:1,440,028円/2年目:685,692円/3年目:653,032円←ライプニッツ係数使用)。
 Xは、Y1に対し、本件賃貸借に基づき14万2,258円の賃料請求権を有するとともに、本件賃貸借における善管注意義務の不履行に基づき、原状回復費用相当額94万4,475円および逸失利益277万8,752円、合計386万5,485円の損害賠償請求権を有する。
 従って、上記金額から敷金25万2,000円を差し引いた361万3,485円がXの有する損害賠償請求権と認められる。

(3)連帯保証人Y2は保証債務の範囲に入らないと主張するが、債務不履行と相当因果関係のある損害の範囲にその責任は限定されるから、責任が不当に拡大するものではなく、消費者契約法10条により無効とされることはない。
 参考までに、賃借人が居室内で自殺したケースで、賃貸人に損害賠償請求権が認められた判例として東京地判平19・8・10(RETIO No.73)があり、逸失利益については本件と同様な判断を示している。

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1 問題の所在
 地主が土地を賃貸した場合に、当該土地賃貸借契約に借地借家法(平成4年7月末日以前に設定された賃貸借契約の場合には「借地法」)が適用されるか否かは、地主にとって非常に大きな影響があります。仮に、土地賃貸借契約に借地借家法が適用されれば、借主は借地借家法によって保護され、賃貸借契約の期間が満了しても法定更新によって期間は延長され、地主から立退きを求めることは困難になります。契約が法定更新されると、借地借家法では初回の更新は20年間、それ以降は10年間、借地法では堅固建物では30年間、非堅固建物では20年間という期間が設定されます(期間の定めのない契約となる借家の法定更新とは異なります)。借地借家法における賃貸借契約の期間に関する規定は、当事者の合意よりも、法律の規定が優先する強行法規であり、当事者間でどのように合意しても、法律が規定している効果が発生するのです。
 他方、土地賃貸借契約に借地借家法が適用されないのであれば、当該契約は民法上の問題ですので、期間満了によって、地主は借主に立退きを求めることが可能になります。
2 借地借家法が適用されるか否かで 問題となる事案
 借地借家法が適用されるのは、土地賃貸借契約が「建物所有目的」の場合ですから、地主が駐車場として賃貸し、借主が駐車場として使用している場合には、借地借家法の適用はありません。よく問題になる事案は、例えば、「資材置き場の目的」で、契約期間は短期で賃貸したところ、借主が当該土地上に建物(または建物と評価しうる構築物)を建築し、地主も期間満了時に立退きを求めずに、そのまま長期間が経過してしまったような場合です。地主の側で、借地人の利用状況を絶えず確認し、建物らしき物が建築された場合に、契約違反を理由に速やかに契約解除等の対処をすればよいのですが、そうでない場合には、貸主の期間満了の主張に対して、借主は借地借家法の適用を主張してくる場合があります。この点、「臨時の設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には」借地借家法は適用されないとしていますので、仮に、建物(または建物と評価可能な構築物)が当該土地上に存在していたとしても、当該賃貸借契約が「一時使用の目的」である場合には、借地借家法は適用されません。
 実際の裁判では、土地上の構築物が「建物」と評価できるか否か、また当該契約の目的が「一時使用の目的」と評価できるか否かが争点となりますが、今回は、そのうちの「一時使用の目的」について解説をしたいと思います。
3 基本的な考え方
 裁判において、「一時使用の目的」の借地と評価されるには、地主と借主間で、契約書に「一時使用の目的」と記載したり、1年というように短期の期間を定めれば、それで「一時使用の目的」と評価され、借地借家法の適用がなくなるというものではありません。たとえ「一時使用」等の記載が契約書にあっても、土地上に建物が存在しているような場合、単に借地借家法が予定している最短期間を下回る期間が設定されたものとして、借地借家法(借地法)が適用され、借地借家法では期間が30年間(借地法では堅固建物であれば60年間、非堅固建物であれば30年間)の借地権が存在しているという判断がされる可能性があります。つまり、借地借家法の適用を排除するための「一時使用の目的」とは、契約書に単に『一時使用』と記載すればいいのではなく、契約自体の目的から、当該土地の契約期間が短期間で終了することについて合理的な理由があることが客観的に看取できるようなものでなければならないのです(当事者の合意よりも法律の規定が優先するという強行規定の性質が表れています)。
 一時使用目的であることが当該契約の目的から客観的に看取できる典型例としてよく挙げられるのは、ある特定の工事のために、その工事期間中だけ、作業員のための宿舎を設置する場合、一定の期間だけ開催される博覧会や興行の会場としての土地の賃貸借契約がなされる場合などであり、そのような目的は、当該契約の目的から「一時使用の目的」であることは明らかであり、借地借家法の適用はないものとされます。
4 判断の際の基準
 裁判において、土地賃貸借契約が一時使用目的として認定されるためには、「当該宅地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等、諸般の事情を考慮し、当事者間に、短期間に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的理由が存在することを要する」としたものがあります。もう少し噛み砕いて表現すれば、借主が土地を賃借した目的、建物およびその設備が構造上永続的な使用に耐えうるようなものか、簡易なものか、建物の規模と敷地の規模の比較および位置関係、契約期間、契約開始時の権利金等の金銭の授受の有無、契約期間が終了する毎に契約書を取り交わしてきたか否か、契約開始時の地主および借主の意思、地主側の立退きの必要性、借主側の土地使用の必要性、等の諸事情を総合考慮するということになります。
5 具体的な裁判例
@一時使用目的の否定例(借地法を適用)
 会社の店舗事務所および倉庫用建物を建築するために、締結された賃貸借契約が一時使用のものと認められないとされた事例があります(東京高裁平成8年11月13日)。


 この事例は昭和62年頃に、土地を期間2年、賃料月額2万円で賃貸し、その後、2度にわたって契約を更新した後に、平成5年になって期間満了によって賃貸借契約は終了したと地主側が主張したものです。裁判所は、賃借人側が当該土地を賃借したのは、会社設立において本店事務所を建築する目的であったこと、その後、同土地上に事務所・倉庫を建築して、本店事務所兼資材置き場として利用してきたこと、地主側は建物の規模、使用状況を知りながら、特に異議、苦情を述べなかったこと、賃借人は契約当初から短期間に限って土地を借り受ける意思であったものではなく、一方、地主においても早期に同土地の返還を受けるべき予定も必要もなかったこと等の事実関係から、当該賃貸借契約は一時使用目的のものではないと判断しました。

A一時使用目的の肯定例(借地法の適用を排除)
 一時使用目的を肯定した裁判例としては、作業員宿舎、材料置場等として使用され、2年ごとに更新されて約25年継続した土地賃貸借契約が一時使用目的とされたもの(東京地裁平成3年3月27日)、倉庫所有を目的とする賃貸期間2年間の土地賃貸借契約が更新により約20年間継続した場合でも一時使用目的の借地であるとしたもの(東京地裁平成5年9月24日)、存続期間を1年間とする土地賃貸借契約が15年間にわたり更新されていた場合においても、一時使用の目的が維持されていたと認定した事例(東京高裁平成5年12月20日)、倉庫・作業所を建築使用するために締結された賃貸借が一時使用の借地権の設定であるとされた事例(東京地裁平成6年7月6日)等があります。
 上記の各裁判例は、権利金等の金銭の授受がないことや、契約期間が終了する毎に契約書を取り交わしていること、契約書の文言等を考慮して、一時使用目的を肯定しています。


B裁判例について
 裁判例としては、一時使用目的の肯定例を多数挙げましたが、これは実際の裁判で容易に一時使用目的が肯定され、借地借家法の適用が排除されるということではありません。
 最終的には案件ごとの個別具体的な事情によりますが、借地借家法の強行法規としての性格からすれば、土地上に建物が建築され、同状態が長期間継続しているような場合には、地主にとって不利な判断が下りる可能性がありますので注意が必要です。
6 定期借地権について
 現在の借地借家法では、期間満了時契約の更新を認めない定期借地権という制度が創設されています。仮に、借主が土地上に建物または建物らしき構造物の建築を容認するような契約なのであれば、定期借地権を活用するのが適切な対応と思われます。定期借地権の種類としては、一般定期借地権(期間50年以上)、事業用定期建物借地権(期間10年以上50年未満)、建物譲渡付権利借地権(期間30年以上)があります。

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3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、東北地方を中心に甚大な被害を発生させました。 東京においても、人数は少ないものの、死者が出ております。しかし、東京の場合、震源から比較的距離があり、 震度も最大で5強程度に留まったことから、深刻な被害の報告は、ほとんどないようです。
 とはいえ、東京においても建物等の軽微な損傷は多数発生している模様であり、また東北地方沿岸部の壊滅的な被害や 仙台市内のマンションの損傷についての映像を目の当たりにして、万一東京で同様のことが発生したらどなるだろうかと思いを巡らす方が多いようで、地震に関する相談が多くなっています。
 地震と不動産取引を巡る法律問題は極めて多岐に及んでおり、ここで網羅的に解説することは到底できませんが、比較的質問の多いケースに限って、ご紹介したいと思います。
1 売買取引と地震

(1)売買契約締結後決済前に建物が倒壊したケース
 土地・建物の売買において、売買契約を締結したが、代金決済・引渡しが未了の時期に地震が発生して建物が倒壊したというケースです。
 このケースにおいて、建物が中古であるか、または新築であっても建物が完成済みの状態で売買契約を締結した場合であれば、売買契約成立後に売買対象物が滅失したということになりますので、法律上、危険負担の問題となります。売買対象物が契約成立後引渡しまでの間に、売主・買主双方に過失がなく滅失してしまった場合に、当該滅失の危険を売主と買主のどちらが負担するかという法律問題です。
 売買契約書には、ほぼ100パーセントと言ってよいのですが、危険負担に関する条項が盛り込まれており、売主が危険を負担するという定め(債務者主義の定め)をしています。売主が危険を負担するということは、建物が滅失した場合には、売買代金のうち当該建物の代金部分について代金請求権が消滅し、売主は買主に対し建物代金部分を請求できないことになります(買主において契約を解除することができるという定めをすることもあります)。売主が売買対象の建物を引渡すことができないわけですから、それと対価関係にある建物代金を買主が支払わなくて良い、というこの結論は、多くの方にとって常識と思われます。

 しかし、ここで注意しなければならないことがあります。実は、民法の原則は、これと全く反対であり、特定物の引渡債務に関する危険負担については、民法は債権者主義を採用しておりますので(民法534条)、危険は債権者=買主が負担することになります。つまり、買主は売買対象物である建物の引渡しを受けることができないにもかかわらず、代金は全額を支払わなければならないのです。
 このような結論を「常識に反する」と非難することは簡単ですが、民法の原則ですから、動かしようがありません。ですから、不動産売買契約書には、必ず、危険負担について民法の原則とは反対に債務者主義を採用する条項が設けられているのです。危険負担の問題が発生することは極めて稀なのですが、まさに地震の時にはこの問題が発生するわけですから、十分に注意をしておく必要があります。
 なお、建物が未完成の状態で売買契約を締結した場合には、売主は、建物を完成させて買主に引渡す債務を負っているわけですから、たとえ地震によって建物が滅失したとしても、売主は、再度建物を建築し完成させて引渡せば良いだけであり、危険負担の問題は原則的には発生しません。


(2)売買決済後に建物が倒壊したケース
 土地・建物の売買において、代金決済・引渡しが完了した後に地震が発生し建物が倒壊したというケースです。
 このケースにおいては、売主も買主もそれぞれ債務の履行を終えてしまっているわけですから、危険負担が問題となることはありません。倒壊のリスクは、建物を所有している買主側が負担するということになります。
 しかし、このケースにおいて、例えば、新築建物や築年数がそれほど経過していない建物であるにもかかわらず、震度5程度で倒壊したとなりますと、当該建物には構造耐力上の欠陥、つまり「隠れた瑕疵」が存在すると判断される可能性が高く、買主から売主に対して瑕疵担保責任(民法570条)が追及されることがあります。
 なお、ここでは、一応、震度5程度を例として挙げましたが、震度いくつまで耐えられなければイコール瑕疵だ、という画一的な基準があるわけではありませんので、この点は誤解のないようにしてください。


(3)売買契約締結後に買主が購入意欲を失ったケース
 売買契約を締結後に今回の大震災が発生したことにより、当該売買契約の対象不動産には何らの損傷も発生していないが、買主側の購入意欲が著しく減衰し、売買契約を解消したいとの申出があったというケースです。
 このケースの場合は、売買対象物に何らの支障が発生していないのですから、買主が契約を解消するには、手付放棄の方法しかないことになります。
 なお、対象建物自体には損傷はないが、周囲の土地が液状化により被害を受け、地域全体の不動産評価が低下してしまったという相談もありました。しかし、この場合については、売買対象の建物自体に損傷がないのであれば、原則、法律問題は発生しないと思います。ただ、売主業者または媒介業者について、周囲の土地の液状化リスクについての説明に不備があるようであれば、その点に関する責任追及はあり得ないわけではないと思います。


2 賃貸借と地震

(1)賃貸中の建物が地震により倒壊したケース
 地震という不可抗力により賃貸中の建物が倒壊したというケースですが、この場合は、賃貸借契約の目的物が地震により倒壊して消滅してしまったわけですから、賃貸借契約は当然に終了することになります。目的物があってこその賃貸借であり、目的物がなくなってしまえば賃貸借契約が継続することはありません。
 また、この場合、地震という不可抗力によるものですから、契約終了に伴う損害賠償の問題も原則発生しません。
 ただ、震度5程度で倒壊したとなりますと、先程と同様、建物の構造耐力に重大な欠陥があると判断される可能性がありますので、この場合には、貸主側の債務不履行責任や土地工作物責任(民法717条)が追及される可能性はあります。


(2)賃貸中の建物が地震により損傷を受け補修を要するケース
 地震により賃貸中の建物が損傷を受けたというケースです。
 まず、地震により躯体には問題は発生していないが、賃貸人側が所有する内装類・設備類が補修を要する状況に陥ったというケースが考えられます。この場合は、賃貸人側に修繕義務があることになります。地震のような不可抗力の場合も、賃貸人側に修繕義務(民法606条)があるという原則に全く変わりはありません。
 内装の損傷に留まらずに躯体自体に損傷が発生したケースであっても、同様に修繕の問題となり、賃貸人側に修繕義務があります。ただ、修繕するには建替に匹敵するような高額の費用がかかるというのであれば、それは実質的に建物の滅失と同様に考えることができ、(1)と同様に処理されることになりましょう。

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貸室の汚れや隣室の騒音など多くの問題があったにもかかわらず、建物賃貸人が対処せず管理全般を怠ったことは賃貸人 の債務不履行であるとして、賃借人が損害賠償請求等を求めたが棄却された事例(東京地裁 平22年1月20日判決 控訴棄却)
1 事案の概要

 Xは、平成19年8月、「家賃:10万3千円/月、敷金・礼金各1ヵ月分」の条件で、Yからマンションの一室を借り受けた。Yは、Xの家賃3ヵ月分以上が未払いとなったため20年4月16日付けの書面で催告を行い、Xが同月28日までに支払わなかったため賃貸借契約を解除した。Xは建物を明渡さず、Yは建物の明渡しと未払家賃等の支払いを求めて提訴し、Xは家賃の減額事由があるなどとして争ったが、裁判所はYの請求を全部認め、21年3月、Xは本物件をYに明渡した。
 Xは「Yには下記の本物件の管理全般を怠った債務不履行があり、下記Bの事情で浴槽を一度も利用できなかったから本物件は風呂無し物件に相当するので、家賃は月額5万1千5百円が相当であって72万1千円(14ヵ月分)の損害がある。また、本件賃貸借契約の解除に基づく原状回復として、礼金および敷金の合計20万6千円の返還を求める」として、Yに対して92万7千円の支払いを求める訴えを起こした。一審はXの請求を全部棄却し、Xが控訴した。


(Xが主張する主なYの債務不履行)
 @入居時、YはXに本物件に隣人の夜通しの騒音による睡眠妨害の問題があることを伝えず、また、対応依頼に対し何ら問題収束のための管理義務を果たさなかった。AYは、本物件の清掃(トイレの汚れ、浴室のカビ等)や不備の確認をせずにXに賃貸し、Xが清掃を求めてもこれに対応せず管理責任を放棄した。B入居後羽虫が異常発生し、浴室、洗濯機バン等に虫の死骸が増えたため、浴室が使えなかった。また、本物件の天井の裏等に虫が巣を作っていた。CYは、北風が吹くと風圧のため玄関のドアが開けられないことを事前に伝えなかったため、何日も外出できないことがあった。DXが上記等の問題を指摘しても、Yは文書で回答せずに対応を怠り、Xが家賃を支払うことはできないと通知しても何もせず、不義理の限りを尽くした。


2 判決の要旨

 裁判所は以下のように判示しXの控訴を棄却した。
(1)集合住宅にあってはその構造上、ある居宅における騒音が他の居宅に伝播して、平穏な生活や安眠を害するといった生活妨害はしばしば発生するところであるが、この場合、平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として判断して一定の限度までの生活妨害は、社会生活上やむを得ないものとして互いに受忍すべきである。X提出による隣室からの騒音を録音したCDでは通常の生活音が聴き取れるにとどまり、他に隣人同士が相互に受忍すべき範囲を超えた騒音が存在したことを認める証拠はない。
 浴槽、窓、洗濯機のバン等に虫の死骸があること、浴室やトイレに若干の汚れがあることが認められるが、これらは、日常生活に伴って自然に生じる程度のものである限り賃借人が清掃等によって自ら対処すべきものであり、これらが通常の使用に伴って生じる程度を超えるものとはいえない。
 その他Xの損害等について事実を認めるに足りる証拠はない。また、Xの問題指摘に対しYは文書で回答しなかったと主張するが、前記認定のとおりXの指摘点につきYが対処すべきものは認められないから、Yが一度しか対応しなかったことが債務不履行を構成すると認めることはできない。

(2)本件賃貸借契約は20年4月に解除されているが、本契約の礼金は家賃の前払的性格を有し、契約終了時に返還しない旨の合意が存在したことが認められる。敷金は賃借人の延滞賃料等を担保するためのものであるところ、本件ではXに敷金額を上回る未払家賃および家賃相当損害金の支払義務があるから、当該敷金は、未払家賃および家賃相当損害金に充当される。したがって、Xの主張には理由がない。

(3)以上により、YにX主張の債務不履行はない。また、Xは前訴(建物明渡しと未払家賃等の支払請求訴訟)にて家賃減額の事由として本件同様の主張をしており、本件訴訟は実質的に前訴の蒸し返しというべきであり、Xの請求を棄却した原判決は相当である。

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社会の高齢化が一段と進行し、高齢者をとりまく紛争が多数発生しています。高齢者から金銭をだまし取る悪質な刑事事件は論外として、ごく一般の社会生活の中にある取引をめぐっても高齢者の問題は波及しています。ところで、遺言、特に公正証書遺言については、およそ効力が否定されることはないとお考えでしょう。ましてや、証人2名が弁護士であったり、司法書士であったりした場合は疑問を持つことすらないでしょう。
 ところが、最近の裁判例を見てみると、結構、高齢者の遺した公正証書遺言の効力が否定されている例が見受けられるのです。今回は、改めて高齢者問題を公正証書遺言の作成過程にスポットを当てて考えてみたいと思います。
 遺言書の要件
 まず、有効な遺言書であるための要件について、能力の観点から簡単におさらいしてみましょう。
(1) 遺言について定められた法律は民法ですね。そして、遺言のことが書かれてある場所は、親族・相続に関する分野です。
(2) 遺言も法律行為の一つですが、民法総則に定められた行為能力の規定(未成年・成年後見等)は適用されません。未成年者でも満15歳になれば遺言することはできますし(民法961条)、成年被後見人も一定の要件のもとに遺言することができます(同973条)。
(3) 未成年者でも成年被後見人でも遺言が可能であるといっても、遺言そのものの意味、遺言書にかかれた中身の意味、遺言することによって発生する効果などについては理解する能力がなければいけません。このような理解し判断する能力のことを遺言能力といいます。
 成年被後見人でも「・・・事理を弁識する能力を一時回復・・・」する時があり、その時だけは遺言能力があるとされるわけです。
 15歳であっても物事を理解し判断する能力は十分にあることは多いでしょう。これに対して高齢者、それも精神能力が劣化し、または劣化しつつある方々は今でも数多くいらっしゃるし、これからますます増え続けるわけです

 成年被後見人の多くは高齢者であり、そこに高齢者遺言の効力が争われる温床があります。遺言だけでなく、高齢者を相手に取引を進めなくてはならない会員のみなさまにとっても悩ましい問題となります。

遺言の効力が否定された裁判例
 具体的な事例を簡単に紹介しましょう。
 まず、Aの事例は、遺言者は87歳の女性です。司法書士2名の証人の立ち会いを得て公正証書遺言を作成した案件ですが、裁判所は詳細な事実認定のもとに遺言の効力を否定しました(東京高判平22.7.15)。この事例は、遺言者は認知症であり、妄想的被害を訴えたり、昼夜の認識や場所の見当識も薄れる状況にあったようです。証人として立ち会った司法書士は、公正証書を作成した当日に初めて遺言者と会い元気に会話している様子から認知症であることを疑わず、担当の医師等にも意見を聞かないで手続きを進めたようです。
 次にBの事例は、遺言者は弁護士を通じて公正証書遺言の作成を依頼し、同弁護士ら2名の立ち会いを得て作成したが、その効力が否定されました(東京地判平20.11.13)。
 この事例では、遺言者は認知証ではなかったのですが、弁護士と遺言内容の打ち合わせをした時には精神にまったく異常がなかったのに、その後1ヵ月足らずの間に肺がん等の病状が急激に悪化し、遺言公正証書を作成した時点では精神に異常をきたし、結局、遺言能力はなかったと認定されました。
 公正証書遺言の効力が否定された裁判例はまだまだありますが、それを披露するのが目的ではありません。上記二つの事例を「高齢者と宅地建物取引業」というタイトルに置き換えてみると、たちまち会員のみなさまの問題になるのです。


 公正証書遺言の作成過程と宅地建物の売買ないし賃貸などの取引は場面が違うことは確かです。しかし、どちらも有効に法律行為が成立しているかどうかという問題を考えなければならない点では共通しており、根本には当事者の意思能力の問題が横たわっているのです。

高齢者の取引をめぐる法律問題は  その数だけ潜在する
 取引(売買・賃貸借・媒介)に関して必要とされる当事者の能力問題は、遺言と違って民法総則に定める行為能力の規定が全面的に適用されます。未成年者や成年被後見人とまともに取引をすれば、その取引は取り消しされる危険があります。そのような危険を回避するために、これらの制限行為能力者には法定代理人が付され、具体的な取引は、親権者あるいは後見人等が代理して行います。制限行為能力の制度によって、本人の意思能力を厳格に吟味しなくても安心して有効な取引をすることができます。
 ところが現実には意思能力に問題のある高齢者のすべてが成年後見の手続きを経て後見人を付しているわけではありません。このような高齢者と直接取引し、あるいは取引の媒介をする場面では、上記A、Bの事例があてはまってしまいます。A、Bの事例は、一方は認知症の高齢者、他方は急激な病状悪化により精神に異常をきたした高齢者という点にポイントをしぼって説明しました。しかし、判決ではそれ以外に詳しい事情を認定しています。特にAの事例においては、遺言者の過去数年間における生活態度、病院や施設等への入出所歴、家族らとの人間関係等々について詳しく分析されています。
 会員のみなさまの取引の相手となる当事者(特に売主)の取引時の前の生活状況がどうであったかを調べるのはなかなか困難です。しかし、売買等の取引は、いきなり契約日当日に売買の話題が出て、即時に調印されるものではありません。依頼を受けて調印に至るまでには何ヵ月間かの時間があり、その間にある程度の調査は可能です。この間に可能であった調査を怠ると、単に売買等の取引の効力が否定されてしまうだけでなく、取引を仲介した業者は、効力が否定されるような取引を媒介したとして買主から責任を追及されかねません。
 この他にも高齢者の取引をめぐる法律問題は、取引の数だけ潜在していると考えられます。そして気がかりなのは、高齢者を含む消費者の保護が強調されていくと、精神や能力が完全に異常とまでいえなくても取引の効力に影響を及ぼすことがあり得るだろうということです。説明文書の片隅に簡単に説明してあるだけの場合とか、反対に過大な分量の説明文書・図書等による説明などは、当事者、特に高齢者には理解できない場合があります。ただ書いてあればよい、説明すればよいというのでなく、当事者が理解するための説明が肝心です。会員のみなさまにあっては、自らが当事者になったつもりで、この先の取引を慎重に進められていかれることを切望する次第です。

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2011年度税制改正大綱の概要は以下のとおりとなっています。「大綱」とは案のことで、例年のケースだと3月末までに正式な法律になり、今年も政府・与党はその方向で国会審議を進めています。主な改正点は次のとおりです。
■相続税の改正
 (いずれも2011年4月1日の相続から)
@基礎控除の縮小(増税)
 相続税の「基礎控除」が、大幅に縮小されます。基礎控除とは、ここまでは相続税がかからないという金額のことです。40%縮小されることにより、相続税の対象となる人が大幅に増えることが予想されます。


●相続税の基礎控除の改正
 2011年4月1日から相続はこう変わる!


現 状 5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)
改正後 3,000万円+(法定相続人の数×600万円) 40%縮小


●たとえば、法定相続人が妻に子ども2人の場合の基礎控除

現 状 5,000万円+(3人×1,000万円)=8,000万円
改正後 3,000万円+(3人×600万円)=4,800万円


●たとえば、マイホーム100u×30万円/u(路線価)、預金3、000万円、財産の合計6,000万円の場合

現 状 6,000万円<8,000万円、よって申告は不要
改正後 6,000万円>4,800万円、よって申告は必要※

A生命保険料控除の縮小(増税)
 死亡保険金の非課税枠が、〔500万円×法定相続人の数〕から、〔500万円×(法定相続人のうち未成年者、障害者、亡くなった人と同一の生計者)〕に縮小されます。

B最高税率の引き上げ(増税) 最高税率について、50%から55%に引き上げられます。


■贈与税の改正
 (いずれも2011年1月1日の贈与から)
@子、孫への贈与税率の緩和(減税、増税)
 子、孫への生前贈与の税率が緩和されます。410万円以上の贈与は減税になります。ただし、最高税率は相続税に合わせて、50%から55%に引き上げられます。
A相続時精算課税の孫への適用拡大(増減税なし)
 生前贈与について、2,500万円まで贈与税がかからず、将来の相続時に、生前に贈与した財産を贈与時の時価で持ち戻して計算する「相続時精算課税」について、贈与の対象者が孫まで拡大されます。


■法人税の改正
@税率の引き下げ(減税)(2011年4月1日以後に始まる期から)
 法人税率が30%から25.5%に引き下げられます。さらに、資本金1億円以下の会社は、所得800万円以下の軽減税率が、18%から15%に引き下げられます。地方税を含めた実効税率は、約41%から約36%へ5%引き下げられます。

A雇用促進税制の創設(減税)(2011年4月1日〜2014年3月31日)
 青色申告の会社が、従業員を10%以上かつ5人(中小企業は2人)以上を採用した場合、1人当たり20万円の法人税が減税されます。


■所得税の改正
@給与所得控除の上限規制(増税)(2012年分から)
 給与収入(年収)から控除される「給与所得控除」について、年収1,500万円超は一律245万円に縮小されます。さらに、役員については、年収2,000万円超から給与所得控除を245万円から少なくしていき、年収4,000万円超で一律125万円に縮小されます。
A退職所得の1/2課税の見直し(増税)(2012年分から)
 退職所得(退職金)は、退職所得控除額を差し引いた金額の1/2課税となりますが、勤続5年以下の役員については、1/2課税が廃止されます。
B成年扶養控除の見直し(増税)(2012年分から)
 所得から差し引かれる扶養控除(38万円)のうち、原則として23歳以上64歳以下の扶養親族については廃止されます。ただし、合計所得400万円以下(給与収入なら568万円以下)は適用を継続します。
C上場株式の軽減税率の延長(減税)(2013年まで2年延長)
 上場株式の配当所得、譲渡所得について、本来は20%が10%(所得税7%、住民税3%)となる軽減税率が、2年間延長されます。

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賃料滞納は、賃貸人、あるいは管理業者がなしうる行為、実際の手続等については、おぼろげに理解していても、正確に 理解している人は少ないように思われます。
 そこで、今回は、賃料滞納者に対する対応等につき、説明したいと思います。
 自力救済禁止の原則について
日本では、「自力救済禁止の原則」というルールがあります。自力救済禁止の原則とは、相手方の意思に反した権利の実現は、法的手続によったのでは、権利の実現が不可能または著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合を除いて、原則として許されないというルールです。逆にいえば、自己の権利を相手方の意思に反して強制して実現するためには法的手続によらなければなりません。具体的には、賃貸人が、相手方の了解なく、滞納を理由に鍵を交換したり、建物の中の荷物を搬出したような場合には、住居侵入、窃盗等の刑事責任、不法行為に基づく損害賠償責任等の民事責任を負う可能性があり、これは、契約書中に自力救済を容認する条項があったとしても同様です。
裁判例でも、賃貸借契約書中に「賃借人が賃借料の支払いを7日以上怠った時は、賃貸人は直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。又、その後7日以上経過した時は、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分しても、賃借人は異議の申立をしないものとする」との特約(自力救済条項)があることを理由として、管理会社が、借主の賃料不払いに対抗するために、従業員を居室内に侵入させたり、居室の鍵を取り替えさせたりしたことが不法行為に当たるとして管理会社の損害賠償責任を認めた例があります(札幌地裁平成11年12月24日)。相手方の意思に反して自己の権利を実現するには法的手続、具体的には強制執行手続によるしかないのです。


 裁判手続、強制執行手続について
ところで、強制執行手続を行うためには、その前段階として債務名義、つまり裁判所の判決等を得る必要があります。そこで、裁判手続、強制執行手続がどのように進行するのかを説明いたします。

@ 賃料の催促
賃料滞納が起こった場合、まず、賃借人に対し、書面などで未払賃料を催促し、それでも、賃借人が未払賃料を支払わない場合には、賃貸借契約を解除することになります。

A 賃貸借契約の解除
賃貸借契約を解除する方法としては、賃借人に対し、配達証明付内容証明郵便で、「本書到達後・・日以内に、延滞している賃料金・・円を支払わなければ、賃貸借契約を解除する」という意思表示をするのが一般的です。解除の意思表示を配達証明付内容証明郵便で行うのは、裁判での立証に備えるためです。なお、解除の意思表示をする際には「・・日以内に・・未払賃料全額を支払わなければ・・賃貸借契約を解除する」というように、原則として支払猶予期間を設けた契約解除の意思表示をしなければなりません。この解除の意思表示は、賃借人に到達させる必要がありますので、賃借人が内容証明郵便の受領拒否等をする場合には、賃借人に、直接、交付するなどの方法をとる必要があります。その具体的な方法は様々ですが、いずれにしても、賃借人が契約解除通知の内容を知りうる状態にしなければなりません。そして、賃貸人が催告した期間内に、賃借人が賃料を支払わなかった場合には、賃貸借契約は解除されます。


B 裁判手続
賃貸借契約が解除されれば、賃借人は、当該建物を使用する権限を喪失するわけですから、本来は、すぐに当該建物を明渡さなければなりません。しかし、実際には、賃貸借契約が解除されているにも拘わらず当該建物を明渡さない賃借人もおり、その場合には、賃貸人は、賃借人の当該建物からの退去を求めて裁判所に訴訟提起するしかありません。裁判手続を経ずに、賃借人が当該建物の使用権限を喪失していることを理由として、建物内の荷物を搬出したり、鍵を交換することは、上述の自力救済禁止の原則から許されないからです。裁判手続に要する時間は、個々の事案により異なりますので、一概には言えませんが、裁判の第1回期日は、訴訟提起から約1ヵ月後の期日が指定されるのが普通ですので、事実関係に全く争いがなかったとしても、訴訟提起から判決言渡しまでは短くても1ヵ月半から2ヵ月程度はかかってしまうのが通常です。


C 強制執行
裁判所の判決、あるいは和解調書等の債務名義により、建物の明渡しを命じられたにも拘わらず、賃借人が当該建物を明渡さない場合には、建物明渡しを目的として強制執行申立をします。強制執行申立には、賃借人に判決等が到達していることの証明等が必要ですので、判決の言渡しから、強制執行申立までは、短くても2週間程度はかかります。そして、強制執行手続では、執行官とともに当該建物に赴きますが、強制執行申立から賃借人の荷物を当該建物から搬出するまでには、短くても2ヵ月程度はかかるのが通常です。さらに、強制執行手続において、当該建物内の荷物を搬出するための人件費等は通常の引っ越しとは比較にならないほど高額です。また、強制執行手続で搬出した荷物は、その場で廃棄をすることはできず、通常は、一定期間、賃貸人側で保管することになります。そして、保管期間中に賃借人が引き取りにこない場合に、賃貸人が同搬出物件を買い取り、当該搬出物件の所有権を賃貸人が取得した上で廃棄等をすることになります。

D 上述のように、裁判手続、強制執行手続を経て、建物明渡しを実現するためには長期間を要しますが、自力救済禁止の原則から、相手方の意思に反して権利を実現するのは強制執行手続を介してしか許されない以上、致し方ありません。


 未払賃料の追求
次に、未払賃料の回収について説明します。金銭回収を目的とした強制執行として、典型的なものとしては以下の3通りが考えられます。

@ 動産執行
動産執行とは、動産を差押・売却等して金銭的な満足を得るための手続です。しかし、賃料滞納者が所有している動産に財産的価値があることは稀でありますし、現在の執行実務では、居住用建物内の動産はほとんどが差押禁止ですので、現実的には満足を得ることは難しいと思われます。

A 不動産執行
賃料滞納者が財産的価値のある不動産を所有していることは稀ですし、申立には費用と時間がかかること等からして、満足を得ることは難しいと思われます。

B 債権執行(預貯金、給料の差押等)
賃借人が第三者に対して有している債権を差押さえる執行方法です。賃借人が金融機関に対する預貯金払戻請求権、あるいは勤務先に対する給料支払請求債権等の債権を差押さえる方法が最も典型的と思われます。債権執行は、債権者が第三者(金融機関あるいは勤務先)から直接、取立が可能なことや、執行費用が比較的安価であることから、取引銀行、勤務先等が判明している場合には、有効な回収方法になることがあります。


 管理業者の関与
時折、当該物件を管理している業者から、賃貸人に替わって訴訟を提起したい、あるいは賃貸人の代理人として訴訟に関与したいとの相談があります。しかし、訴訟の原告は賃貸人であり管理業者ではありませんので、管理業者が賃貸人に替わって当事者として訴訟を提起することはできません。また、代理人としての関与については、簡易裁判所では裁判所が許可すれば一般の方も代理人になれますが、裁判所は当該物件の管理業者という理由では代理人の許可を出さないのが通常です。
さらに、地方裁判所以上の上級審では訴訟手続において代理人となれるのは原則として弁護士だけです。つまり、管理業者は、裁判手続では証人等としては関与できますが、原告本人、あるいは原告代理人として関与することは難しいということです。

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公道に面していないが、他人の土地を通れば事実上公道に出られる宅地について、そもそも公道までの通行権があるのかどうか、土地の売買があった場合に通行権に関する権利義務は承継されるのか、といったご質問をよく受けます。 最近いくつか判例も出ているところですので、今回は通行権の基本をまとめておきます。
 囲繞地通行権について

(1)公道に通じない袋地の所有者は、公道に至るために、その土地を囲んでいる他人の土地(囲繞地)を通行することが認められています(民法210条)。これを「囲繞地通行権」と言います。
ただし、通行者は、囲繞地の損害に対して償金(通行料等)を支払わなければならないのが原則です。

(2)もともとは公道に通じていた土地が分割されたり一部譲渡されたことによって、公道に通じない袋地が生じたときは、分割による残余地や譲渡された土地のみを通行することができ、それ以外の他人の土地を通行することはできません(民法213条)。この場合、通行者は償金を支払わなくてもよいとされています。
なお、分割による残余地等が第三者に譲渡された場合、実際には別の土地を通ったほうが公道に接続しやすいとしても、213条の通行権の負担は消滅しませんので注意が必要です(最判平2.11.20)。

(3)囲繞地通行権による通行の場所および方法は、通行者のために必要であり、かつ囲繞地にとって損害が最も少ないものでなければなりません(民法211条1項)。
ここでよく問題となるのが、幅員です。具体的には、建築確認を取るために接道要件を満たす幅員2メートルの囲繞地通行権が認められるか、あるいは自動車通行が可能な幅員の囲繞地通行権が認められるか、といった形で問題となります。
判例を分析すると、特殊な事情がない限りは、囲繞地通行権は基本的には「通行できる幅があればよい」ということになり、既存通路がある場合には現状維持的な判断となって、幅員の拡大を求めることは難しいということになりそうです。


例えば、判例は、単に特定の土地が建築基準法の接道要件を満たしていないとの一事をもって、接道要件を満たす幅員の囲繞地通行権が当然に認められることにはならないとしています(最判平11.7.13)。
自動車による通行については、ごく最近の最高裁判例が、@自動車による通行を認める必要性、A周辺の土地の状況、B自動車による通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を考慮して判断すべきであるとの一般的基準を示しており、今後はこの基準に照らしながら自動車通行が可能な幅員の囲繞地通行権が認められるかをケース毎に判断していくことになると思われます(最判平18.3.16。なお、民法改正により「囲繞地」という言葉がなくなったので、本判決は「210条通行権」「213条通行権」という言葉を用いています)。


通行地役権について

(1)民法280条により、自己の土地(要役地)のために他人の土地(承役地)を通行する権利を物権として設定することができます。これを「通行地役権」と言います。
通行地役権の対価(通行料)については、民法上に規定がなく無償が原則ということになりますが、設定契約時に対価を定めておくのが通常です。

(2)通行地役権は物権ですから、登記することができますが、逆に登記しておかなければ第三者(例えば承役地の譲受人)に対抗することができなくなってしまいます(民法177条)。
ただ、実際には登記されていない通行地役権が多いと思われます。そこで、判例も、承役地が要役地所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置・形状・構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ承役地の譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、登記なくして通行地役権を対抗できる、と判示して、その権利保護を拡大しています(最判平10.2.13)。

(3)通行地役権は、これを設定する旨の当事者間の契約によって成立するのが原則ですが、時効によって取得することもあります。
ただし、時効取得のためには、通行地役権が「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる」ことが必要です(民法283条)。ここに言う「継続」という要件を満たすためには、要役地所有者自身によって承役地上に通路が開設されることが必要だとするのが判例です(最判昭33.2.14、最判平6.12.16)。単に長年にわたって他人の土地を通過していたとしても、それは断続的に通行していたにすぎず、通行地役権を時効取得することはできませんので注意してください。

(4)また、通行地役権設定の明示の契約がなくとも、黙示の設定契約が認められる場合もあります。
ただし、判例は、黙示の設定契約があったと言えるためには単に通行の事実があり、それを通行地の所有者が黙認していたというだけでは足りず、さらに「右所有者が通行地役権または通行権を設定し法律上の義務を負担することが客観的にみても合理性があると考えられるような特別の事情」が必要であるとしています。具体的な例としては、一筆の土地を分譲する際、通路を利用する譲受人に対しその通路敷所有権を分割帰属させる場合を挙げています(東京高判昭49.1.23)。地主が何も言わなかったというだけで通行地役権が認められるわけではないので注意してください。


債権的通行権について
契約により、債権としての通行権が発生することがあります。有償の場合は賃借権、無償の場合は使用借権ということになります。債権である以上、当事者限りの権利ということになるので、土地の譲受人が当然にこの通行権を承継取得するわけではないことには注意を要します。


通行の自由権について
「通行の自由権」とは、建築基準法の適用を受ける私道について、判例上、一定の要件のもとで認められる通行権です。
例えば位置指定道路を公衆が通行することができるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害されても妨害排除等の請求権を有しないのが原則です。
しかし、判例は、位置指定道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものとしました(最判平9.12.18)。
ただし、「日常生活上不可欠の利益を有する者」と言えるかどうか、言えるとして自動車通行まで認められるかどうかは、事案毎に厳格に判断されています。単に位置指定道路である、あるいはそれに接した土地の所有者であるというだけで、当然に通行権が認められるわけではないということには注意しなければなりません。

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6月は憧れのジューンブライドの季節です。新婚夫婦の賃貸借契約を取り扱うことも多いのではないでしょうか。
 そこで、今月は建物の賃貸借契約のトラブル事例を2つご紹介します。
事例1 巧妙な名義貸しに要注意
ある男性Aが、「妻Bと居住するために、家を借りたい」と言ってきました。そして、妻の親戚と名乗る人物Cが保証人となり、保証人の印鑑証明書も提出されました。
一見、ごく普通の取引事例です。このような場合、警戒するでしょうか?
ところが実際は、AとBは夫婦でも親戚でもなく、しかもAは一度も入居することなく、当初からBとCが居住する目的だったのです。つまり、Aはいわゆる名義貸しをしていたのです。
法的には、Aの家族でない人物を入居させるつもりはなく、真実を知っていれば契約を締結しなかったであろうから、Aの詐欺による契約であって取消ができるのかどうかとか、AからC(およびB)への賃借権の無断譲渡を理由に解除できるのかどうかという問題もあるものと考えられます。
しかし、現実問題としては、Aから賃料の支払が続けられていて、本件建物がきれいに使用され、迷惑行為もないという限りにおいては、黙認する大家さんも多いのではないでしょうか。
今回のケースでは、大家さんが契約者以外の者が居住していることに気がつき、重ねて、契約者の滞納も度重なり、相談にみえたのです。
そもそも、名義を借りるケースは、自分自身では入居できない事情があるから名義貸し人に頼るのです。たとえば、年収が低かったり、不法入国者など人定特定困難な場合であったり、当該建物を不法目的のアジトにする目的であったり、その他、大家の入居審査を通過できないようなさまざまな場合が考えられます。
名義貸しをする側について考えてみると、名義貸しをする理由は、名義貸し人(名目上の契約者)と名義借り人(本来の入居希望者)との間に情誼関係がある場合や、名義貸し人が名義を貸したことによる見返りを期待する場合などが考えられます。ですから、次第に情誼関係が希薄になったり、見返りを得たので情誼を果たす必要がなくなったり、名義貸し人自体の経済的事情が悪化した場合には、滞納が始まりやすいと思われます。
このような意味でも、トラブルとなる確率が高いのです。


■事例1に学ぶ

(1)入居審査時の注意点
では、入居審査時、どのようなことに気をつければよかったのでしょうか。
まず、住民票は借主の部分だけではなく、同居者全員分についても提出を求め、しかも続柄が記載された住民票を提出してもらうべきでしょう。
今回の場合、続柄が記載された同居者全員分の住民票を提出してもらえば、Aがうそをついていたことを少なくとも発見できたはずです。
そして、滞納に対処できるようにするためには、入居者および保証人の勤務先、年収等を記載させ、給与明細書、源泉徴収票の写しなど、勤務先および年収等が確認できる書類を提出してもらうとか、かかる書類の提出がないときには、記載事項の内容を賃借人や保証人の同意を得た上で勤務先へ確認すべきでしょう(個人情報保護法の観点から同意は必要となるでしょう)。
簡単に提示できる証明書類を提出できる立場にあるのに、その提出を拒む場合は、要注意と考えられます。
一方、入居時の鍵交換希望や入居開始希望日を入居申込書に記載していることを理由に、不信と判断する大家さんもいるようですが、好みの問題は別としても、それを審査基準とすることは、かなりの人気物件でもない限りは、結局、空き状態をつくってしまうことになりかねません。

(2)事後対策
入居後、契約者以外の者が居住していることに気がついた場合には、どのようにしたらよいでしょうか。
まず、詐欺を理由にして契約自体を取消す旨の通知あるいは契約違反または賃借権の無断譲渡を理由にして契約を解除する旨の通知を出すことが考えられます。滞納が生じた後には、滞納による解除通知を出すことも考えられます。しかし、初期対応としていずれの通知書を出すかは、高度な専門的判断を必要としますので、早い段階で弁護士に相談することをお勧めいたします。
いわゆる占有屋といわれる者が占有を開始したような場合には、占有者が転々移転して大家の損害を拡大させて困らせることが容易に考えられます。このような場合には、占有移転禁止の仮処分の申立を早急におこして(この場合、保証金を供託する必要がありますが、仮処分の中でも占有移転禁止の仮処分は比較的容易に決定が出されるようです)、占有者を固定し、引き続き本裁判を起こして勝訴判決を得て明渡執行をすることになります。


事例2 印鑑証明書の印影と違っていた!
居住用賃貸借契約を締結するにあたり、保証人とは直接会わずに、借主に賃貸借契約書を持ち帰らせたところ、保証人欄には署名はなく押印のみがなされており、印鑑証明書原本が添付されていたという場合で、大家さんが保証人に対して滞納賃料を請求したところ、保証人から、「そもそも保証をした覚えはない」と保証否認されたという事案があります。
契約書に押印された印影と印鑑証明書の印影は大変類似しているのですが、よく見ると異なっていたのです。
このような場合、印鑑証明書のみが本物で、本人の関係者からめぐりめぐって借主が入手し、大家さんの手元に渡っており、本人は本当に保証を知らなかったということも考えられますし、本人が保証否認するためにあえて印鑑証明書と異なる印影の印鑑を契約書に押印したことも考えられます。
現実に、裁判官によって心証も異なってしまいました。安価な賃料の保証のために印鑑の偽造を行うことは考えにくいという裁判官もいれば、印影が異なる以上は本人が保証をしたとは言い難いという裁判官もいます。


■事例2に学ぶ
いざ、保証否認を主張されてしまいますと、署名がなかったり、押印があっても印鑑証明書と異なる場合、証明は難しいようです。
契約締結するにあたり、事前に保証人と直接会って、本人確認書類および年収や勤務先が分かる書類を確認することが必要です。
遠方に居住していて直接会うことが困難である場合は、保証意思の確認方法を検討しなければなりませんが、返信用葉書で意思確認を行うとか、電話で行うことが考えられます。本人に了解が得られれば、勤務先に連絡して勤務していることを確認するのも場合によっては必要となります。保証人の印鑑登録証明書と印影の同一性を確認することの重要性も改めて感じさせられました。
署名がない場合、筆跡を調べることすらできませんので、署名を確認することも重要です。筆跡に不信な点がないかどうか、たとえば、借主の欄と同一の筆跡であれば、借主が契約したいがために保証人に無断で保証人の名前を記載している可能性がありますので、かかる観点からの注意も必要でしょう。

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◎一団地全棟の建替えが可能に 

 一棟の建物を区分して所有する法制については、民法(旧)208条に規定された垂直区分の棟割長屋への対応がありましたが、昭和38年4月に垂直水平の区分所有建物(マンション)に対応する「建物の区分所有等に関する法律」が新設されたことで同条を削除。昭和58年には区分所有法が改正され、“建替えは所有者および議決権の各5分の4以上の決議”と多数決原理を採用。阪神・淡路大震災(平成7年)で、マンション建替えの難点が顕在化したため、平成14年に同法をさらに改正し、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」も併設。改正法は、一棟毎の建替えのほか、団地全体の一括建替えの項目を追加(70条1項)。また、建替参加者に法人格を与え、権利変換手続を新設するなど、担保権や賃借権の処理を簡略化しました(円滑化法)。

 本件については、従来の棟単位の建替えではなく、12 棟全部の一括建替えの可否を敷地共有者の全員集会で決議する区分所有法70 条1項の活用が鍵になります。最近都内の大規模団地で一括建替事例の判決がありました。 

 鉄筋コンクリート造4、5階建ての17棟(404戸)が建つこの団地では、平成6年から建替えの検討が始まり、平成14年の法改正の後、平成18年4月、平成19年12月、平成21年3月と組合総会で建替決議投票が実施されましたが、いずれも不成立。
 同年9月12日に実施された4回目の投票で、団地内建物全体の区分所有者および議決権の各5分の4以上且つ各建物毎の区分所有者および議決権の各3分の2以上の賛成で建替決議(法70条1項)が成立しました。 

 平成22年7月20日には都知事から建替組合の設立認可(円滑化法9条1項)を得、同月25日設立総会を開催。9月1日到達の書状で組合から建替えの非参加者に売渡請求(同法15条1項)の意思表示があり、10月14日に非参加者(17戸)に売買代金を弁済供託し、組合が建物明渡しおよび移転登記手続等請求を提訴しました。平成24年10月には被告のうち16戸と訴訟上の和解が成立しましたが被告1戸が残留。同年11月15日、被告は原告が供託していた売買代金の供託金(5,622万円余)を還付請求し受領しました(同年10月被告が参加者14名から被告の明渡遅延による建替遅延の損害賠償請求を提訴されたが、これは14名と原告組合との共謀であり、この不法行為による損害賠償の一部として還付を請求するとの抗弁付)。 

 その上で被告は原告組合の建替決議や売渡請求の瑕疵を挙げ、それらの無効を主張しましたが、裁判所は原告による反論を認容し「売渡請求と直接関連性のない請求権で供託金を受領することは認められない」、「供託金を受領しながら居住を続け建替えを事実上阻止することは権利の濫用として許されない」と被告に建物明渡しと移転登記等を命じました(平成24年12月27日 東京地裁判決判例時報2187号)。 

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◎ 低額譲渡とは 

例えば、時価1,000万円の土地を親から子へ無償で贈与すると贈与税が課税されます。それでは、安く売ったらどうなるか、という問題です。時価1,000万円の土地を親から子へ300万円で売ったとしましょう。この場合、差額の700万円が親から子へ贈与されたものとみなされ、贈与税の課税対象となります。
では、時価1,000万円の土地を親から子へ800万円(相続税評価額)で売ったらどうなるのでしょうか。  

◎著しく低い価額とは 

相続税法第7条では、@著しく低い価額で財産(土地等)を購入した場合には、A買主は、時価と譲渡代金との差額、つまり安くなった分の金額を売主から贈与されたとみなす、としています。
また、いわゆる負担付贈与通達(平成元年3月29日付直評5・直資2-204)でも、不動産の負担付贈与や個人間の売買により取得したものの価額は、通常の取引価額により評価する、としています。
つまり、個人間で土地を売買する場合、譲渡代金である相続税評価額が「著しく低い価額の対価」に該当するかどうかということが問題になります。なお、土地評価の基になる相続税路線価は、国土交通省が公表している地価公示価格や都道府県地価調査の基準地価格の80%評価水準とされており、いわゆる通常の取引価額の80%程度と考えられます。
結論としては、相続税評価額は、原則として「著しく低い価額の対価」に該当しません。従って、子に土地を相続税評価額で譲渡しても原則として、贈与税の問題は生じないといえます。東京地裁において表のような判決が出ており、納税者の全面勝訴が確定しています。この事案では、土地の共有持分を路線価(相続税評価額相当額)の対価で親族に譲渡したところ、課税庁側が「時価と売買代金との差額は贈与とみなされる」として贈与税の賦課決定処分をしました。その取り消しを求めたものです。


   

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【ケース】

Xは、平成21年4月、Y2を仲介会社として、Y1から中古の建物と土地を購入しました。 

Xの購入した土地は、敷地と北側隣地の境界に沿って8m余りのブロック塀があり、また、南側隣地との境界には大谷石の上にコンクリートブロックを積み上げた擁壁(本件敷地側が約1.5m高い)が設置されていました。 

Xは、「本件擁壁には耐震性がなく、ただちに補修しなければ、近隣住民等に甚大な損害が生じるおそれが極めて高い状態であった」、「ブロック塀は北側隣地に越境しており、北側隣地所有者の所有に係るものであった」などとして、Y1に対して、瑕疵担保責任、債務不履行および不法行為責任に基づき、Y2に対しては説明義務違反等による債務不履行および不法行為責任に基づき、それぞれ612万円余の損害賠償を求めて提訴しました。  

 【解説】 

裁判所は、次のとおり判示し、Xらの請求を一部認容しました。

(1) 本件土地建物の瑕疵については、土地の地盤は、二次圧密を生じさせる腐植土層を含み、かつ、水締め効果も生じるような軟弱な地盤であり、宅地として利用する上での瑕疵があると認めることができる。また、本件建物の基礎であるべた基礎は、構造耐力上安全なものと認められないから、本件建物の基礎には、瑕疵があるということができる。

(2) 本件土地の地盤及び本件建物の基礎の瑕疵は、本件売買契約前から存在していたものであったと認められるが、これらの瑕疵は、Xらが体感するようになった異常の発生や専門家の調査によって初めて明らかになったものであり、Xらが通常の注意を用いても発見することができなかったと認められるから、本件土地の地盤の性状に宅地としての利用上の瑕疵があり、本件建物の基礎に構造耐力上の安全性を欠く瑕疵があることは、いずれも隠れた瑕疵に当たると認めることができる。

(3) 本件建物の傾斜を補修することによって、本件建物は居住用建物として利用可能となり、本件売買契約の目的は達成できるから、Xらは、Yの瑕疵担保責任に基づき、本件売買契約を解除することはできない。ただし、本件建物の予備調査費用、地盤調査費用、本件建物の傾斜の程度、その原因及び補修方法に関する調査費用として合計102万1,580円、補修費用1,830万円、弁護士費用は、Xらにつき合計190万円と認められるとし、売主に損害賠償責任としてこれらの支払いを命じた(平成24年6月8日 東京地裁判決)。 

 【総 評】 

本件では、売主および仲介会社は、売買契約締結後引渡前までに、測量図面の作成等より越境の事実を知ったのに買主に告知しなかったなどとして、その責任が認められています。買主等にとって不利な事実については、契約締結後であっても引渡前に判明した場合には、買主に告知すべきことを示唆する事例といえます。

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◎ 外国人が日本で不動産を取得する場合の制限について  

「外国人土地法」では、「日本人・日本法人による土地の権利の享有を制限している国に属する外国人・外国法人に対しては、日本における土地の権利の享有について、その外国人・外国法人が属する国が制限している内容と同様の制限を政令によってかけることができる」と定められています。しかし現在では、外国人でも比較的自由に日本の不動産を購入することができる状況となっています。 

◎登記名義人の住所を証する書類が必要 

日本の不動産の所有権の移転登記を申請する際には、不動産登記令第七条で「登記名義人となる者の住所を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)」を登記所に提供する必要がある、と定められています。通常は「戸籍の附票」又は「住民票」がこれにあたります。 

【1】日本に住所を有する外国人の場合

日本に入国・在留する外国人が年々増加している現在、「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が平成24年7月9日に施行されました。それ以前は外国人の場合、「外国人登録原票記載事項証明書」が住所を証する書面となっていましたが、施行後は日本人と同様に「住民票」が発行され、これが住所を証する書面となりました。 

【2】日本に住所を有しない外国人の場合

日本の安定した政治体制や治安等の観点から、外国人の日本における不動産投資が積極的になってきています。
日本以外の国で、住民票制度がない国に住んでいる外国人の住所を証する書面として、登記先例では「本人が住所氏名等についてした宣誓供述に基づき、本国の官憲(領事・公証人等)が証明した書面が住所を証する書面になる」とされています。(昭和37年11月27日付民事甲第3429号民事局等回答 等)。
例えば日本と国交がない台湾の場合、@台湾で戸籍を取得→A台湾の公証人が認証→B台湾の外交部(外務省)が認証→C台北駐日経済文化代表処が認証と四ヵ所を経由するなどの手続きが必要です。
 

◎まとめ 

外国人住民票が発行されない場合は、「住所を証する書面がどのようなものになるか」、また、日本に住所を有しない外国人の場合の「本人確認をどのような方法で行うか」等の事例に応じて対処する必要があります。
外国人の不動産取得について実績のある弁護士や司法書士への相談が必要となるでしょう。

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外国会社と日本の不動産登記についてご説明します

◎ 日本の商業法人登記で登記済の場合 

外国会社が日本において継続して取引をしようとする場合は、「@日本における代表者を定め、当該外国会社について『登記』をすること」が必要です。なお、この登記は日本において成立する会社と同種またはこれに最も類似する会社の設立登記の規定に従ってしなければならないこととされています(会社法第933条第2項)。 

また、「A日本で継続的取引をしようとする外国会社は、日本における代表者を定めた日から3週間以内に、営業所を設けた場合には当該営業所の所在地を管轄する登記所に、営業所を設けない場合には当該代表者の住所地を管轄する登記所に、外国会社の登記の申請をしなければならない(会社法第933条第1項)」となっています。なお、「B外国会社の日本における代表者のうち少なくとも1人は、日本に住所を有すること」も必要です(会社法第817条)。 

このように、日本の商業法人登記で登記された外国会社は、日本の会社と同様に会社の「全部事項証明書」「印鑑証明書」が発行され、これを不動産登記手続きの添付書類とすることができます。 

◎日本の商業法人登記で登記されていない外国会社名義の場合 

投資目的で購入した日本の不動産の登記名義を、本店を英国領バージン諸島、ケイマン諸島 等タックスヘイブン(租税回避地)に置く「外国会社名義」とするケースも多くあります。この場合日本の商業法人登記で登記されていないことがほとんどです。 

この場合は、当該外国会社の代表者が「本店」「商号」「代表者」等についてした宣誓供述に基づき、当該外国会社の本店について本国の官憲(領事・公証人等)が証明した書面が会社の「全部事項証明書」に代わるものとなります。この書面は当然「本国の言語」で作成されているため、法務局に提出する際には「日本語訳」も併せて提出する必要があります(ただし、訳者に資格制限はありません)。  

◎外国会社の日本の不動産取得の制限 

現状は外国会社でも、自由に日本の不動産を購入することができます。しかし、水源地となる森林が平成18年から24年までに約801ヘクタールも外資に買収されるなど、外資による国内の土地買収は近年、社会問題化しています。また外国資本が水源地だけでなく、日本国内の防衛施設の周辺や長崎・対馬など国境離島の土地を相次いで買収したり、外資による国内の土地買収は安全保障上、重要な問題に発展する可能性があります。 

こうした状況を受け、一定の歯止めをかけるための法整備の検討が始まっています。


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